治験(臨床試験)について
一般に治験といわれているが、正確には「臨床試験」という。これは新たな薬物の有効性と副作用を検証するために避けては通れない過程である。大まかにいうと、健康成人を対象とし、薬物の体内動態や最高投与量における安全性を調べる第一相、少数(数十人)の患者さんを対象として安全性と有効性、使い方(投与量や投与方法)を確かめる第二相、100人以上の多数の患者さんを対象として、安全性と有効性を確かめる第三相と臨床試験は進められる。この臨床試験が日本では諸外国と比べて著しく遅れをとったために、抗てんかん薬に関する限り、日本は開発途上国を含めて、世界で最も遅れた低開発国といわれている。その理由は様々だが、少なくともいえることは患者さんこそ最大の被害者ということである。
ここで臨床試験によく出てくる言葉「二重盲検試験法」について簡単に解説する。人が「薬」として与えられた場台、たとえそれが「うどん粉」であっても何人かの患者さんには効果を示すことがあり、これをプラセボ効果(偽薬効果)という。これは投与する医師にも患者さんにもあてはまる。オープン試験といって、医師・患者さん双方が新薬であることを知りながら行った臨床試験の結果には、プラセボ効果で効いた患者さんの数が含まれていることになる。このような臨床試験の実施の仕方が「三た論法」として批判されたのは、はるか三十年前のことである。三た論法とは「使った、治った、効いた」の三段論法を指す。このような臨床試験のあり方を批判し、科学的な臨検のあり方として提唱されたのが二重盲検試験法(double blind test)である。これは一言でいえば実薬と外見を実薬とまったく同じで成分が何も入っていない偽薬を、試験に参加する患者さんに乱数表を用いて無作為に割り当てるやり方で、患者さんのみならず処方する医師もそれが実薬か偽薬か試験が終わるまで知らされない。二重たる所以である。このようにして実薬と偽薬の効果を比較するのが二重盲検試験法である。当然実薬の効果が偽薬より統計的に有意に高くなければ、薬物として承認されない。しかしこれだと、偽薬に当たってしまった患者さんには何のメリットも存在しないことになるので、検査期間が終了後実薬か偽薬か明らかにされた時点で(これをキーオープンという)、偽薬を服用した患者さんには、その後実薬を服用できるように配慮されていることが多い。また、実薬を服用していて効果のあった患者さんは、試験終了後も発売になるまでの間(新薬として承認されるまでの間)、引き続き「長期服薬試験」に移行して、承認・発売までその薬を服薬できる。
今回は現在日本において臨床試験中の薬剤と、希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)として承認されている薬剤および、治療薬ではないがてんかんと密接な関係をもつSPECTの検査薬で臨床試験中の薬物に関して述べる。 |
☆おわび☆
本来、このスペースに海外で用いられている治験薬の紹介ならびそのデータを掲載する予定
でしたが、企業秘密や厚生労働省のガイドラインによる規制により、学会等でデーターが公表
されるまで、Web上での一般公開は控えて頂きたいとの連絡がありましたので割愛させて頂き
ました。
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まとめ
以上の薬の治験が現在進行中であるが、その進行状況は決して芳しいものではない。日本を除く多くの国において、てんかんの診断、治療に関する新たな世紀を迎えたものの、日本は10年遅れてしまったといわれている。より正確な診断とよりよい治療を日本の患者さん達も受けられる日が一日でも早く来るよう、これらの臨床試験を速やかに行うことが求められている。
そのために治験はさけて通れない手順であり、その速やかな遂行のために医療機関の努力とともに、患者さんの協力は不可欠である。現在、治験は、参加する人の人権や安全性が最大限守られ、科学的な方法により正確に調べるための厳密なルール(医薬品の臨床試験の実施の基準:GCP)のもとで実施されている。
身近に難治てんかんで悩む人がいたら、是非とも治験への参加を呼びかけてください。 |
[ 2002.01.25.久保田英幹先生 公開承諾文書 ]